はい、とお辞儀をすると「じゃあ、あとは若いふたりでごゆっくり〜」と恭介のお母さんはどこかへ行ってしまった。
私たちが付き合っているということは、もうバレバレだ。
なんてったって、バイトの説明をするからと恭介がここに連れて来てくれたとき、開口1番に言ったから。「俺の彼女」って。
「きゃ〜〜!」と黄色い声を上げた恭介のお母さんの反応が恥ずかしくてたまらなかったけれど、隠そうともせず断言してくれたこと、ほんとうに嬉しかったの。
「杏奈、このあとどうする?」
いつもより早く終わったバイト。
まだ帰りを急がなきゃいけない時間じゃない。
恭介を見上げて、そっと口を開く。
「まだ……、帰りたくない、な」
ん゛っ、と咳払いした恭介。
耳朶をほんのり赤く染めて、囁いた。
「じゃあ……、俺の部屋、来る?」



