基準値きみのキングダム



恭介のお母さんに、茶封筒を手渡される。

何も考えずに受けとって、一瞬のち、目を見開いた。




「いいんですか……っ?!」




中に入っているお札の感触にびっくりしていると、そばにいた恭介がくすくす笑う。





「いいんですか、じゃねえよ。ちゃんと働いた分の対価なんだから、堂々と受け取らないと」

「だ、だって。こんな風にお金をもらうの、はじめてで」



「ふふ、恭くんの言う通りです。これは杏奈ちゃんが頑張った分なんだから、杏奈ちゃんの好きに使っていいものよ」





節約、節約……とお金といえば、使う量を減らすことばかり考えていたけれど、自分で使えるお金を増やしたのははじめてで。


茶封筒の重みがぐっと増した。




「ありがとう、ございます」

「うん、明日からもよろしくね」