基準値きみのキングダム



𓐍
𓈒



「恭くーん、杏奈ちゃーん、もう上がっていいよ〜」




お店の奥の方から、恭介のお母さんの声がする。


ここで働くことになってはじめて知ったのだけど、恭介はお母さんに「恭くん」って呼ばれているみたい。かわいいよね。





「え、今日もう終わり? まだ午後始まったばっかだけど」

「うん。ふたりのおかげで売り上げ絶好調! 今日お店に出す分のお豆腐、全部終わっちゃったから」





すっからかんになったショーケースを見て、恭介のお母さんがにこにこ微笑む。



近衛くんが帰っていったあとにも、ひっきりなしにお客さんがやってきて、お豆腐は飛ぶように売れていった。


いつも繁盛している人気店だけれど、今日はいつもにも増して大忙しだった。





「杏奈ちゃん、これ、今週の分のお給料ね」