「とにかくお前、返信しろよ!」
「わかったって。後でな」
のれんをくぐってお店を出ていく近衛くんの背中を見送ると、店内に静けさが戻ってきた。
「……あの、恭介」
「うん?」
恭介、って。
あんなに慣れなかった下の名前で呼ぶことも、もう今ではあたりまえのことになっているなぁって改めて思いながら、視線を落とす。
ずっと、繋がったままの手。
「あの、この手、いつまで……っ?」
「今日ずっと」
「っ、それは、さすがに」
「はは、冗談。次の客が来るまでなら、いい?」
うかがうような上目遣いがずるい。
勝てるわけ、ないんだもん。
「……うん。いい、よ」
私の方からもう少し強く、指を絡めたら。
「……かわいいな、マジで」
今日も今日とて、甘さがたっぷり詰まった声で言われる。
そっと頭を撫でられて、もっと熱くなった。



