「いやー、やっぱやめらんないね。杏奈ちゃんが絡むと、恭介の余裕がなさすぎて、笑える」
「マジでやめろ」
「からかってるだけじゃん? 俺、別に、本気で略奪する気はさらさらないよー?」
「……挑発とわかってても、嫌なもんは嫌なんだよ」
はあ、とため息をついた恭介がふいに私の手をとって、きゅっと指を絡めとる。
ショーケースの向こう側にいる近衛くんからは見えない位置のさりげないスキンシップに、ぐわっと体温が上がった。
どうしよう、熱い。
「で、本題は?」
私の手を握ったまま、恭介は涼しい顔で近衛くんをうながした。
「飯行こってずっと言ってんのに、恭介、メッセに既読すらつけないから、来ちゃった♡」
「くだらねえ」



