確定事項のようにそう言って。
一足先に私の家の方向へ歩きはじめた深見くん。
理解が追いつかないまま、その後ろ姿をぼんやりと目で追いかけて────いや、待って? 送る、って言った?
「いいからっ、深見くん、そんなのっ」
慌てて、深見くんの背中を追いかける。
アッシュブラウンの髪が夕日にきらめく、かんぺきなシルエット。学校中の女の子が憧れているそのひとに、こんなこと、させられない。
「深見くん、用事とかないのっ?」
「用事?」
「ほら……、えーと、誰かと会ったり、ご飯に行ったり」
深見くんといえば。
顔が広くて、放課後はいつも誰かに誘われている。
カラオケだったり、ボウリングだったり、うわさでは合コンだったり? 私が一度も呼ばれたことのないような華やかな場所にいつもいるイメージ。
「はは、そんな予定あったら今頃こんなとこいねえよ」
「……う」
それもそうか。
いくら人気者の深見くんでも、フリーな日のひとつやふたつあったっておかしくない、か。
「ってことで諦めな」
「……っ、いやいやいや!」
「京香も王子さまが家まで着いてきてくれたらうれしいもんなー?」
深見くんはしゃがみこんで、京香に話しかける。
きゅるきゅるの瞳をじっと見つめて、懐柔するように。
京香の返事なんて、もちろん。
「うん!うれしい! 王子さま、きてくれるのっ?」
あああああ……。
こうなったらもうだめだ。
なんてったって、私は妹に弱い。
「小学生を取りこむなんて卑怯……!!!」
「ははは、なんとでも言え」



