基準値きみのキングダム



「……え、と」




戸惑い、漏れた声をもマイクがご丁寧に拾ってくれる。

体育館に響いた自分の声に、緊張のボルテージがぐわんと上がった。どうしよう。



当たり障りのないことを言って、はやく、次の人にマイクを渡してしまいたい。



でも、なにを話せば……。



ああ、だめだ、こういうの苦手なの。

するする言葉が出てくるようなタイプじゃない。



困り果てて、視線を泳がせた、その先に。





「……あ」





深見くんを、見つけた。



こんな人の海のなかで、普通見つけられるはずがない。


見間違いかなって一瞬思ったけれど、私が深見くんを見間違えることのほうが、ありえなかった。