基準値きみのキングダム



ウォーキングはこれで終わり。

まだ更衣室には戻れないけれど、あとはステージの上に1列にならんで立っているだけだ。



こんな経験、もう2度とないと思う。


そして、芸能人ってなんてすごいんだろうって思った。

私なんて、文化祭規模でもこんなに緊張して、頭が真っ白になりそうだったのに。




3年生の10クラス分、合計10人。

最後の女の子がステージに上がると、拍手の音がいっそう大きくなった。



よし、これで無事に終わり────とほっと胸を撫で下ろしたら。




「えーと、せっかくなので何かひとことコメントをいただきたいと思います」




司会の生徒会長の言葉に、体がぴしりと固まった。


聞いてないよ。

打ち合わせでは、そんなの、なかった……!




「じゃあ、そうだな。端から順番に」




台本とは異なる進行に、焦る私の内心とはうらはらに、生徒会長がマイクを握らせてくる。


ステージのすみっこを陣取っていたのが仇となって、あろうことか1番手になってしまった。