頭のてっぺんに飾られたティアラ、ぴったりサイズのパンプス。
試着のときにはなかったそれらを身につけると、いよいよ準備完了。
更衣室のすみっこに立てかけられている姿鏡をそっと覗き込む。
「……うん、私、だな」
まるで私じゃないみたい────なんてことはなく。
だって現実には、魔法使いはいないし、魔法もない。
かわいいドレスを着て、ヘアメイクを施しても、私はもちろん、私のままだった。
内海さんのおかげで、いつもよりは背伸びできているけれど。
鏡に映る私は、やっぱり私の理想の女の子ではないし、私の思う “かわいい” とはかけ離れている。
どうしたって、私は私なんだ。
願ったって他の女の子にはなれないけれど……、だからこそ、他力本願じゃなくて、自分の気持ちは自分で見つめてあげないとだめなのかもしれない。
私のほんとうを理解して、言葉にできるのは、私しかいない。
その言葉を待ってくれる人がいるのなら、私が届けにいかなきゃいけない。
見慣れた顔────より、ちょっとだけおめかしした顔を鏡ごしに見つめていると、胸の奥にしまいこんだ本音が、どんどん喉の方までせり上がってくるような気がした。



