基準値きみのキングダム




ものの数分で完成して、その手際のよさにいちばん感動した。

すごい。

私にもその技を教えてほしい。



そしたら京香の髪ももうちょっとかわいくしてあげられそう、なんて考えていると「よしっ、着替えるよ!」と急かされる。


思っていたよりずっと、慌ただしい。



周りを見回すと、みんな大慌てで動いていた。

唯一、服飾部の人たちだけが、冷静に指示している。




「かわいい……」




ドレスに腕を通すのは、試着のとき以来、2度目。


改めて見ても、やっぱりとびきりかわいいデザインで、胸が高鳴る。




かわいいものが好き。

そこにはキラキラの憧れが詰まっているから。

昔から “かわいい” は、私に程遠くて、ずっと、ずーっと、憧れの世界。




背中のホックを留めてくれた内海さんが、私の頭に手を伸ばす。





「仕上げに、これ。あ、靴も!」