基準値きみのキングダム



「上林さん?」




振り向くと、上林さんが腕を組んで仁王立ちしていた。

ギイ、と扉が閉まる音がして、女の子たちの声が遠ざかっていく。

上林さんと、体育館にふたりきり。




「……恭介くんに告白されたんだってね」




目を見開いた私に、上林さんはすっと目を細めた。




「もうとっくに噂になってる。それに、私、恭介くんに関しては情報早い自信あるからなめないでよ。……で、噂によると、杏奈がまともに取り合わずに逃げ回ってるとか」




どういうこと? と首を傾げた上林さんから、ひしひしと圧を感じて、洗いざらい白状することになった。



ぽつぽつと私の唇が紡ぐ言葉を拾うたびに、上林さんの表情は険しさを増していく。





「────それって、恭介くんが自分のことを好きだなんて、ありえないから受け入れられないって言ってるわけ?」


「……っ」