基準値きみのキングダム




「とりあえず着てみて! あ、着替えたら出てきてね、一応サイズの確認もしたいからっ」





更衣室のなか、ひとりきりになって、改めて作ってもらった衣装を広げてみる。

肩の部分を持ち上げると、すとんとティアードのスカートが落ちてきた。




ドレス、だ。



ティアードになっているそれぞれの裾には、スパンコールが散りばめられているだけじゃなくて、繊細な刺繍が入っている。


ディテールが凝っていて、儚い雰囲気のデザインは私の好みど真ん中で、とくん、と胸が高鳴った。




誘われるように、袖を通す。


しっかり採寸しただけあって、腰まわりも丈もぴったりで、着心地もよくて、高校生が作ったとは思えないほどの完成度に息をのんだ。




オフショルダーの袖に腕を通して、パーテーションの壁にかけられていた鏡で、はじめてドレスの全体像と対面する。





「わあ……」





思わず、うっとりするくらい、かわいい。



ふわっとしたプリンセスラインのシルエット、幾重にも重なった裾、桜の花びらみたいな淡いピンクに、光を反射してキラキラ輝く刺繍。



おとぎ話の中に、入り込んだみたい。


かわいくて、かわいくて、胸がきゅっとなるくらいだ。