ぽかーん、と口を開けて固まった私を見て、深見くんはふはっと吹き出した。
「さっきぶりだな。森下は、おつかい?」
「えと……まあ、そんなところで」
「そっか、俺も偶然」
深見くんが持っている買い物カゴのなかには、醤油とキャベツとごま油。たしかに、おつかいって感じだ。
なんだかちょっとびっくりしてしまった。
ほら……深見くんってなんとなく。
「王子……さま?」
私が思い浮かべたことをそっくりそのまま口にしたのは、深見くんに抱えられたままの京香だった。
絵本から飛び出してきた王子さまのような造形の深見くんをまじまじと見つめて、京香がキラキラ目を輝かせている。
「王子……って俺のこと? ふは、キミ、見る目あるなー」
「王子さまなの?」
「残念。俺は王子さまじゃねえよ」
「ええっ」
京香と深見くんのやりとりを聞きながら、思う。
そう、そうなの。深見くんってほんとうに王子さまみたいな雰囲気をもっているから。
醤油とかキャベツとか、庶民的な食材を手にしていると違和感というか、びっくりしちゃう。ほんとうに、同じ人間なんだ……って。
同じ教室で過ごすクラスメイト相手に何言ってんだ、って感じだけど、でも、ほんとうに。
「この子、森下の妹?」
「うん、ええと……」
「もりしたきょーか! 7さい!」
深見くんに、すとん、と地におろしてもらった京香はぴょん、と跳ねて自己紹介。
終わるとすぐに私の方に向き直って。
「杏ちゃん! なーくんのアイスがこっちのチョコのでー、でねっ、きょーかのは……」
「京香、先にお兄ちゃんにお礼言わないと。助けてもらったんだから」



