基準値きみのキングダム




「……杏奈」




お砂糖をまぶしたみたいな深見くんの声が、耳もとにそっと降りかかった。

甘く痺れて、動けない、麻痺したみたいに。




思わず深見くんの背中に回した手で、シャツをきゅっと握ると、深見くんは瞳を熱に揺らす。



そして、そっと持ち上げた手で、私の顔の横の髪に触れた。





「……っ、ぁ」





はらり、落ちた長い髪を深見くんの指先がするりと絡めとって。


ゆっくりと丁寧に、耳にかけ直してくれる。



頬に深見くんの親指が触れて、その淡い感触に思わずぴくんと震えると、深見くんは我に返ったようにパッと手を離した。



名残惜しい、なんて思っちゃだめだ。





「……測れた?」

「……う、ん」