基準値きみのキングダム



「杏奈」

「っ、深見くん」

「一緒に行こーよ。家庭科室」

「……うん」




頷いて、ふたりで廊下に出る。


服飾部の部室である家庭科室は、旧校舎にあって、教室からはちょっと遠い。

ぺたぺたと足音を響かせながら、歩く。




そして、ふと気づいた。



腰の位置高いな、深見くん。

身長が高いのも相まって、脚がすらっと長い。

脚が長いということは、その分歩幅も大きいはず。




なのに、ふたりで歩いていても、置いていかれそうになることがない。

それは今に限ったことじゃなく、今までずっと。




合わせてくれているんだ、私に。


意識してなのか、無意識になのかはわからないけれど、深見くんのそういうところが────……。





「そういえば、もう大丈夫?」

「えっと……?」

「風邪。けっこうキツそうだったろ」