フリーズして、口をはくはく動かすだけで声にもならない。
「えーと。赤マル引いたのは……、もしかして森下?」
まだ理解がおぼつかないまま、とりあえず頷いた。
「んじゃあ、女子の枠は森下ってことで。このクラスからは、深見と森下に出てもらうことに無事決まりましたー。はい拍手」
黒板の白い文字、「深見」のとなりに「森下」が気づけば並んでいて、パチパチと拍手の音のなか、ぼんやり見つめた。
頭が真っ白で、何も考えられない。
「見て。森下さん全然動揺してない。さすが」
「顔色ひとつ変わってないんだけど」
「えーやば。選ばれたの森下さんで正解だったかもね。あたしだったら、即病み案件だもん」
いつもはついつい耳を傾けてしまう、こそこそ話も、耳に入ってこない。
放心状態が数分続いて、ようやく絶望がどっと押し寄せてきた。



