基準値きみのキングダム



「賛成」

「ナイスー」



なんて、ちらほら賛同の声も聞こえてきて、当の、教室のいちばん前ど真ん中に座る深見くんは



「おい椋、お前調子乗んな」



と文句を言いつつ、みんなの方を振り向いた。


するとさらに、どっと教室が湧く。



一気にこんな和やかな雰囲気にしてしまえるのは、中心にいるのが深見くんだからだよね。

他の人だったら、こうはならない。




「ってことで、深見、出演決定でオーケー?」

「あー、別にいーよ。そんくらい」

「マジ? 正直すげえ助かるんだわ」

「その代わり、今度なんか奢ってよ」

「上限学食のアイスで頼む」




気だるげに、だけどすんなり快諾した深見くんに目を見張る。

きっと、こうやって注目を浴びることに慣れているのもあるのだろうけど、それでも、すごいよ。




慣れていたとしても、気乗りするわけじゃないと思うのに。

みんながためらうことを、求められたことを、さらっと引き受けてしまうところが、ずるい。格好いいもん。