教室がざわつく。
ええと、こういうとき推されそうなのは────……とひそかに教室中に視線を走らせながら、考えて。
あ、と目が止まる。
たぶん、クラスメイトみんな同じことを考えて、同じひとを見ている。
視線が集まったのは、教室のいちばん前、ど真ん中。
そしてその様子に「あは、ウケる」と言いながら手を挙げたのは、私の隣の席のひとだった。
「うし、近衛、どーぞ」
中辻くんに指名された近衛くんは、愉しそうに口角をにっと上げて、それはそれは悪い笑みで。
「深見恭介くんを推薦しまーす、えー、理由は特にな────いや、あったわ。理由は、圧倒的に顔がいいからでーす」
近衛くんの間延びした声に、どっと笑い声が上がる。



