基準値きみのキングダム




毎年恒例、文化祭2日目の大目玉、体育館で開催されるファッションショー。



吹奏楽部がステージでミニコンサートをするのと同じで、このファッションショーも、もともとは服飾部の出し物。



服飾部の部員がめいめい作った衣装を発表する場で、観客の投票で “男子の部” “女子の部” それぞれグランプリ衣装が決まる、というものだったのだけれど。





衣装をおひろめするには、モデルが必要。

そのモデルは3年生の各クラスから男女ひとりずつ選出するという伝統(?)になっていて。

それを代々、美男美女が担当してきたものだから。




本来はいちばん素敵だと思った衣装に投票するイベントだったはずが、次第に衣装関係なく顔投票、つまりモデルの人気投票に。




要するに、服飾部のファッションショーは、生徒の間ではもっぱら “事実上のミス&ミスターコン” として知れ渡っているの。




とはいえ、1・2年生の間は遠巻きに見ているだけの、まったく無縁のイベントだったわけで……。


こうやって実際、クラスの中から、あのファッションショーの出演者を募るのは、はじめてのこと。


こんなところで「そっか、もう3年生なんだ」って実感する。





「やっぱ、立候補はさすがに出ないよなー」





静かな教室をぐるりと見渡して、中辻くんが「だよな」と頷く。



こういうイベントに飛びこんでいくのが好きなひとも一定数いるはずだけれど、あいにく、私たちのクラスにはいない。



それは想定内だったようで、中辻くんはまた声を張り上げた。





「じゃー、次、他薦!」