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SIDE/ 森下杏奈



次に起きたときには、もう真夜中で、当然、深見くんは帰ったあとだった。



その代わりに、ベッドのそばに「お大事に」って、深見くんらしいさらりとした字のメモが残されていて、その小さな紙を思わず胸の前でぎゅっと抱きしめた。

たった4文字が、心強くて、お守りみたいで。




そして翌朝には熱は下がっていたけれど、奈央に言われるがまま、大事をとってもう1日欠席することに。




結局、2日も休んでしまった。


病み上がり、久しぶりの教室だ。



まだ本調子じゃないけれど、そうも言っていられない。


休んだ分、今日から頑張らないと、と気合いを入れて立ち上がったのだけれど。





あれ……?

おかしいな。




次は化学の授業だから、移動教室のはず。

なのに、クラスメイトは誰ひとりとして教室から動こうとしない。




化学の教科書を抱えたまま、きょろきょろと周りの様子を伺っていると、隣の席の近衛くんのいぶかしげな視線に捕まった。