基準値きみのキングダム




「あー……だから言ったじゃん。不味いって」




深見くんは照れ隠しのように、自ら雑炊をすくって、ひと口食べた。すぐさま顔をしかめて「マズ」と呟いている。


その様子にまた笑ってしまった。




だって、料理が苦手って言ったってここまでとは思わなかった。

そもそも深見くんって何をしても器用にこなすから。

こんなにもあからさまな弱点があるなんて、知らなかった。





「だから嫌なんだって、料理すんの……」




むすっと不服そうな深見くんに、きゅっと胸が疼く。




「かわいい……」

「それ、全然褒め言葉じゃないし。嬉しくねえ」





ますます拗ねた顔をする深見くんが珍しくて、また笑い声が口から漏れた。

たまらない気持ちになる。





「冷めないうちに、全部食べる」





くいっと深見くんの袖を引いて言うと、深見くんは「えっ」と本気で驚いた声を上げた。