基準値きみのキングダム



𓐍
𓈒




妙に焦げくさい匂いと、近づいてくる人の気配で目が覚める。

ぱちっと目を開けた私に気づいて、深見くんは申し訳なさそうな顔をした。




「悪ぃ、起こした?」




ふるふると首を横にふる。




「まだ寝ててよかったのに」

「大丈夫だよ。むしろ目が覚めてよかったし」

「なんで?」

「……なんでも」




だって、寝顔はあんまり見られたくない。

どんな顔をしているか自分ではよくわからないけれど、きっとだらしないもん。見せられたものじゃない。



口を濁した私に深見くんは不思議そう。


そんな深見くんが持っているお鍋に、私の視線は吸い寄せられる。



ふわふわと湯気が立ちのぼるそれは、きっと。




「ほんとうに、作ってくれたんだ……」




深見くんがわたしのために作ってくれたごはんで間違いない。


そう思うと胸がきゅっとして、無意識にお鍋にキラキラした目を向けていると、深見くんはバツが悪そうに「あー……」と呻いた。




「とりあえず、見る?」

「……?」




首を傾げた私の前で、深見くんがお鍋の蓋をぱかっと開けた。