「深見くん」
「んー?」
「もう、帰った方がいいよ。風邪うつっちゃうから……」
「やだ」
本気で深見くんの体調を心配して言ったのに、深見くんはいたずらな笑みを浮かべて一蹴した。
「うつらねーよ。俺、体、丈夫だから」
でも、と反論しかけて、思いとどまる。
もし……もし、何も言わなかったら、深見くんは、ここにいてくれるのかな。
葛藤のなか、じっと深見くんを見つめると、深見くんは優しく目尻を下げた。
「そういえば、杏奈、なんか食べた?」
「あ……、まだ、何も」
尋ねられて改めて記憶をたどると、私、朝から何も食べていなかった。
意識すると途端にお腹がぺこぺこな気がしてくる。
それを見透かしたかのように深見くんが提案する。



