「熱は、朝測ったっきり?」
「うん……。そのあとは、ずっと、寝ちゃってて」
「風邪引いてる時は寝てた方がいいんだから、それで正解」
とりあえず、もっかい熱測っとく? って、深見くんが体温計を差し出してくれるから、受けとって、脇に挟んだ。
体温がわかるまでの間に、深見くんは自分の鞄をなにやらごそごそと漁って、「これ」と何かを取りだして。
「今日のノート」
「えっ」
「要るだろ。あいにく、今日、数学と化学のダブルコンボだったし」
「あ、ありがとう……助かります」
1日休むだけで、容赦なく進んでいく授業には平気で置いてきぼりになってしまうから。
今度登校したときに、誰かにノートを見せてもらわなきゃって思ってたんだけど、まさか先回りして貸してくれるなんて、思わなかった。
「写して、すぐに返すね」
「いや、いーよ。それコピーだし」
「え」
「もともと杏奈に渡そうと思ってたやつだから」
思わず、まじまじと深見くんを見つめてしまう。



