ああだめだ、うまく頭、回んないな。
だって、深見くんの表情が、まるで私を心配してるみたいに見える────……と思っていると、突然ふわっと体が浮いた。
「ひゃっ」
膝の裏と背中にしっかりと回った腕。
深見くんに、お姫様抱っこ、されてる。
「な、なにして」
「杏奈の部屋ってどこ」
「左の奥、だけど……。ちょっ、待っ」
「ん。とりあえず部屋戻ろ、話はそれから。んなふらふらの状態で立ってる場合じゃねえだろ」
普段の私なら、じたばたしてでも抵抗したと思う。
だけど、暴れる元気は出てこなくて。
素直にくたりと体を預けると、深見くんはなぜかちょっと満足げだった。
「体、熱い」
「だって、熱、あるから……」
「何度?」
「朝測ったときは、39度ちょっと」
「まじか。普通に高熱じゃん」
危なげない足取りで部屋までたどり着いた深見くんは、こちらがむず痒くなってしまうほど、そうっと慎重に、ベッドに横たえてくれる。
それから、ふわっと毛布と布団をかけてくれた。
もっと、雑に扱ってくれていいのに。



