基準値きみのキングダム



𓐍
𓈒




予鈴が鳴って、お昼ごはん会(?)はお開きになる。




結局、ほとんどの人とは挨拶を交わすだけで、ちゃんと話せなかったけれど。


そもそも、上林さんがとつぜん私をこの場に呼んだのは、なにが目的だったのかな。

わからずじまいだった。




お弁当を片付けて、みんなに続いてプレハブを出る。


ひらひらと手を振ってそれぞれの教室に向かうみんなに、ぺこぺこと会釈を繰り返して、よし私も帰ろ、と渡り廊下へ足を踏み入れようとすると。




「杏奈」




ぴくっと心臓が跳ねた。
やっぱり、全然、慣れない。



平静を装って振り向くと、深見くんは私をまっすぐ見つめて微笑んだ。

ふにゃっとした、柔らかい笑顔。




「一緒に戻ろ。同じクラスなんだし」

「だったら、近衛くんも待つ?」

「は?」

「え、だって、クラスメイト……」




あの場にいたメンバーで、クラスメイトは深見くんと近衛くんだけ、わたしを含めて3人。


同じ教室だから一緒に帰るって流れなら、近衛くんだけ省くっていうのもおかしいかなって、思ったんだけど……。