こいつらといる数年より あいつといた一瞬が 輝いているのはなぜだろう

「じゃあな」
いつもの下校の別れの言葉と共に、本当の別れの言葉を。
「僕、引っ越すから、ばいばい」
 息を軽く吸ってから発した言葉はあっさりとしていた。思ったより気持ちは落ち着いている。
今なら、こいつを真っ直ぐ見ていられる。いつもは直視できないけれど今この時間で最後だと思うと目に焼き付けておきたい。
いっそのこと、このまま時間が止まってくれればいい。
「え、いつ?」
少し上ずった声の問いに
「今日で最後」
静かに答えた。
「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ」そうやって責められることを、引き留められることを望んでいたのかもしれない。
「そっか…」
ちょっと残念そうにするだけの彼の反応に寂しさを感じた。それと同時に好きなのは僕だけなんだな、と改めて実感した。
「お前のことは好きにならない」と現実を突きつけられた気がして息苦しくなった。
今すぐにこの場から走り去りたい。数分前まではずっとこのままがいいとか思ってたくせに。いまはもう、消えたい。
 好きになったのが悪いんだ。出会わなければよかったんだ。
…お前が、僕の気持ちに気づなかったのが悪いんだ
「お前となんか出会いたくなかった」
 これが僕の別れの言葉だ。