クズの間に生まれた子どもはクズなのか？

兄がそう言って部屋に入って来た刹那、家の柱を思い切り殴る。

子どもに無関心な母、わがままな妹、暴力的な兄、そしてーーー。

「お義父さん、この間はご立派でしたよ！」

父が家に来ている母方の祖父にペコペコしている。しかし、父は内弁慶のため祖父が帰ったらまた威張り散らすのだろう。

「弁当のおかずは四品以上用意しろ！」

「この漫画買って来い！」

「あたしの宿題やっといて〜！」

朝から晩までこき使われ、友達と遊びに行ったことなど一度もない。恋なんて、している暇もなかった。

この家は牢獄よりもひどいものだ。早く家を出て自由になりたい。私の思いは日に日に強くなっていった。



彼と出会ったのは、私が高校一年生の秋のことだった。

学校の文化祭の時、私は図書委員だったため、図書館に置かれた古本を売っていた。

「あの、これください！」

そう言って私に一冊の本を男子生徒が見せる。それは、私の好きな小説家の本だった。