愛する人にそう言われると、嬉しすぎて自然と笑ってしまう。私はクスッと微笑み、「抱っこしてみる?」と五十鈴くんに善を抱っこしてもらった。

「わっ!結構重いんだね」

「成長が赤ちゃんって思っていたより早いのよ」

「じゃあ二ヶ月なんてあっという間だね」

二ヶ月すれば予防接種を受けることができる。予防接種さえ受ければ善とともに駆け落ちできる。私はこくりと頷いた。

五十鈴くんはよく善に会いに来ては、善のお世話をしてくれた。私に全部任せきりの将吾とは大違い。でも、それもあと少しの辛抱。

そして、善は生後二ヶ月となり予防接種を受けた。それを五十鈴くんに報告する。

「一週間後、日本を発つことが決まったよ。その前に籍を入れよう」

五十鈴くんがそう言ってくれたので、私は善を連れて市役所に向かう。仕事帰りの五十鈴くんが待ってくれていた。

「一緒に書こう」

「はい」

前に将吾と書いた時とは違い、胸が高鳴っている。もう偽物の結婚生活はおしまいだ。本当に好きな人と一緒になれる。

婚姻届は無事に受理され、私は小川玲になった。