クズの間に生まれた子どもはクズなのか？

「……そうか……」

五十鈴くんは私を抱きしめたまま、暗い声を出す。捨てられる、そう思い私は身構えた。

「玲……」

五十鈴くんは、ゆっくりと口を開いた。



大学を卒業してすぐ、私は石田将吾と入籍することになった。紙を将吾から渡される。

「これ、あと書くのは君だけだから」

将吾は自分のところはもう書いてある。私は一人で婚姻届にサインし、役所まで車で一人で行った。

そして、豪華な結婚式を挙げてヨーロッパへ新婚旅行へ。結婚式では笑顔を貼り付けておかなければならなかったし、新婚旅行は体調を崩していたため楽しいとは言えなかった。

そのあと、私は高級マンションの一室に将吾と二人で住むことになった。家事は私がすることになっている。

「……行ってきます」

「行ってらっしゃい……」

新婚とはいえない低いトーンで挨拶をし、私は広い部屋の掃除等を済ませる。そして、地味な服からカーキスカートとブルーシャツに着替える。そして、バスであの人のもとへと向かった。