『逃げたか』
『誰、だったんでしょう』
『ナンパだろ。やっぱり気づいてなかったのか』
『ナンパ!? 初めてされました!』
どこか嬉しそうにも見えて、本当にそのうち痛い目に合いそうだと心配になる陽。
『ということは、あなたは助けてくれたんですね。ありがとうございます!』
椅子から立ち上がり深くお辞儀をした少女に、またナンパされないうちに帰った方がいいんじゃないかと陽は提案したのだが。
『私、家出中なので』
だからまだ帰りませんと、少女はクビを横に振った。
簡単にナンパに引っかかる少女だ。
さすがに『じゃあ俺はこれで』と去るのも心配になり、陽は向かいの席に腰を下ろした。
そして、自分はこんなにもおせっかいな性格だっただろうかと不思議に思いつつ、話せるようであればと口頭で伝えてから家出の原因を聞いた。
『うちは父が厳しくて、色々と制限されてるんです。心配してくれているのはわかっているし、心配かけたくないんですけど……』
『たまには自由にしたい、ってところか』
『そうなんです! その気持ちが爆発しちゃって、ついに家を飛び出してきちゃいました』
『なるほどな』と頷き、陽は少女がナンパ男を適当にあしらうことができない理由に納得がいく。



