──高校生の紬花が父親と喧嘩して飛び出したその日、大学生だった陽は、将来エトワールで働くべきかと悩んでいた。
デザイナーの道を歩みたい。
その為に専門の大学に入学したのだ。
しかし、父の再婚相手、その連れ子である兄博人が、弟に負けまいと自分を追い込んでいるのを陽は知っていた。
祖母に、父に、御子柴の家に必要とされるべき人物であるように努力を重ねているのを。
負けん気が強い兄ではあるが、悪い人ではない。
陽と仲良くなろうと、様々な遊びに付き合ってくれた。
兄が求める居場所を奪うような真似はしたくない。
ならば、やはり別の会社に……と、将来について思案しながら繁華街を歩いていた陽の視界に気になる者たちが入った。
『あっれー? 久しぶり! 元気してた?』
『えっ?』
『俺だよ、俺! いやぁ、会えて嬉しいな。良かったら、今から遊びに行かない?』
カフェのテラス席で繰り広げられる、よくあるナンパの光景。
明らかに知り合いではなさそうで、それなら潔く興味があるから遊びたいと誘う方がマシなのではと、陽は鼻で笑った。
今時こんなのに引っかかる女がいるのか。
大学の友人はアホらしい誘い方で乗る気にもならないと言っていたのを思い出す。
──しかし。
『あ、あの……? えっと、どこで……?』
ここにいた。
どうやら少女は本気で知り合いなのかと思っているようで、思い出そうと必死になっている。



