俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない


帰宅した紬花が大きなベッドに潜り込んだのは、時計の針が日付を変更して間もなくだ。

まだひんやりとした布団の中、日々段々と見慣れてきた天井を眺める。

聞こえるのは規則的な秒針の音と、ひとり分の呼吸音だけ。

顎の辺りまで布団を引き上げた紬花の頭は、陽のことで溢れていた。


(御子柴さん……機嫌悪そうだったな……)


やはり疲れているのか、それとも体調が悪いのか。

もしくは、落ち込むようなことでもあったのか。

帰りのリムジンでも家に戻ってからも、陽と最低限の会話しかしていないのを思い出し、紬花は小さく息をつく。


(何かしてあげられることはないかな)


疲れているのなら心と体を癒せることを。

体調が優れないのなら、回復を促すものを。

気分が落ち込んでいるのであれば、心が晴れやかになる時間を。

最近見せてくれるようになった笑みが見たいという思いもあり、紬花はとにかく自分にできることをしてみようと心に決める。

そっと擦り合わせた足が、布団を被り始めた頃よりも温まっていることに気づく。


(御子柴さんは、もう寝たかな……)


入浴を済ませた紬花が肌の手入れを入れしている間に、浴室の方で音がしていた。

今はもう何の物音もせず、静かな夜の気配だけが辺りを満たしている。

紬花は、寝返りをうって横になり、いつもの眠る体勢を取った。

それだけで、一日頑張った身体は自然と入眠へ向かう。

次第に瞼が重くなり、訪れた眠気に抗うことなく目を閉じると、紬花は陽への想いを抱えて夢の世界へと旅立った。