(確かこの辺りにシャワーが……)
予想通り、指先にシャワーから注がれる湯の雨が触れ、次はヘッド部分を掴もうと、体を前のめりにしたのがいけなかった。
「あっ」
シャワーハンガーから抜き取った直後、バランスを崩し足を滑らせた紬花は、シャワーヘッドを手に掴んだまま顔面から床に突っ込んだ。
しかし、異変に気付いた陽が瞬時に左腕を差し出して、紬花の身体を支え……ようとしたのだが、座っていた体勢からはうまくいかず、結局、共に床の上に倒れ込んでしまった。
シャワーホースが浴室のタイルの上で踊り、ヘッドが上向くと湯が噴水のように降ってふたりを濡らしていく。
陽の髪から泡が流れて落ち、紬花は、体に服がへばりついていくのを感じながら、無意識に閉じてしまった瞼を開いた。
けれど、目隠ししているので何も見えず、状況確認のため瞼を覆うスカーフを取り払う。
すると、自分の下にまたしても陽が倒れていて紬花の瞳が大きく見開かれた。
「ご、ごめんなさいっ。あの、怪我はしてませんか?」
世話をするはずが、また助けられてしまった。
骨折させただけでなく、さらに怪我を負わせてしまったのではと焦って陽の体を確認しようと視線を走らせ、紬花の動きはピタリと停止する。
階段から落下した時と同じ状況だと錯覚していた。
故に、視界に映る引き締まった腹部、自分とは違う平たくも逞しい胸板に激しく戸惑い、同時に、陽が男であることを強烈に意識し、瞬く間に頬に熱が灯る。



