俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない


少しひんやりとした柔らかな液体が紬花の手のひらに広がり、そっと伸ばすとシャワーで頭を濡らし椅子に腰かけた陽の髪を泡立てていく。

ざあざあと温かな湯が降り注ぎぐ音を聞きながら、陽の頭皮を優しく指の腹でマッサージしていると、弟の髪の毛を洗ってあげたことを思い出し、紬花が小さく笑った。


「なんだ?」

「あ、いえ。弟が骨折した時にこうして髪の毛を洗ってあげたんですけど、私に洗ってもらうのが気に入ったからって、怪我が治ってもしばらくせがまれたのを思い出して」

「……俺は、弟じゃないぞ」


少し強めの声色に、紬花は手の動きを止める。


「御子柴さん、怒ってます?」

「……別に、怒ってない。いいから続けてくれ」


しかし、その言葉には確かに苛つきが滲んでおり、弟の話がきっかけであることに紬花は気付いた。


(御子柴さんは確か今年で二十七歳、よね。私より三つ年上だし、年下扱いされたみたいでいやだった……とか?)


手探りで頭を洗いながら陽の機嫌を損ねた原因について思案し、そろそろお湯で泡を流そうとシャワーを手に取ろうと思ったが、いかんせん目隠しのせいで場所がわからない。

ならば陽に頼めばいいのだが、機嫌が悪そうな今お願いした場合、世話をしきれていないとみなされ減点されかねず、まずは自分で頑張ってみようと昨夜の記憶を頼りにあたりを付けて右手を伸ばす。