──エトワールの店舗から明かりが消え、二時間後。
陽は、自宅の脱衣所に入るなり深く長い溜め息を吐いた。
「なんのつもりだ」
「御子柴さんは恥ずかしくて断っているだろうから、これならお風呂でも手伝えるとあゆみさんからアドバイスをいただきました」
名案ですよねと陽に話しかける紬花だが、その方向には鏡に映る自分がいるだけだ。
Tシャツと短パンに着替え、手拭いで両目を隠した紬花が。
『見えなきゃいいんでしょ? それならゆいちゃんが目を隠せばオッケー! よし、これで毎晩しっかり背中を流してあげられるわね』
紬花の脳裏に、ランチの時に聞いたあゆみのアドバイスが蘇る。
(昔はよく、お父さんの背中を流してあげたっけ。上手だって喜んでもらえてたし、御子柴さんも片手で洗うよりはいいと思ってくれるはず)
同じく骨折した弟の世話をした時のことも思い出し、気分はすっかりお世話モードになっている紬花を、陽は困惑しながら見下ろしていた。
(なぜそんな薄着なんだ。これもあいつの入れ知恵か?)
今後、世話に関してあゆみのアドバイスなど聞かなくていい。
とにかく脱衣所から出ていけと追い返すつもりで陽は口を開きかけたのだが、最初に世話を拒否した時のように、むしろ一度好きにさせて特に必要ないことをわからせるのも手だと考え直す。
目隠しなどしているからきちんと洗えていなかったと、これなら次は自分でやると断る口実もできる。



