(もし会えたら、話したいことがたくさんあるのに。何より、あなたのおかげで夢を見つけられたんですよ、鳴瀬さん)
とある大学の大学祭で見たウェディングドレスを思い出しながら、御子柴の長い指が資料をのページを捲るのを眺める。
「どうした? ふぬけた顔して、寝不足か?」
紬花の視線がぼんやりと自分の手元に注がれているのに気づき、陽は肩からかけたジャケットを直しながら僅かに首を傾げた。
「いえ、ふっかふかのベッドを貸してくださったおかげで、気付いたら朝でした」
「……お前、俺を男だと思ってないだろう」
世話をするという目的にしろ、異性の家に泊まるのだ。
少しは危機感というものを持つべきではないのかと逆に心配していると、今度は紬花が眉をぐっと寄せる。
「えっ……御子柴さん、女性なんですか!?」
信じられないといった様子で尋ねられ、陽は呆れ半ばにこめかみを押さえた。
「どっからどう見ても俺は男だろうが」
「ですよね。びっくりしました」
「お前の思考回路の方が驚きなんだが」
やる気を削がれた陽が資料を鞄にしまったところで、車はエトワールへと続く階段の前でゆっくりと停車した。



