それは、七年前、紬花がまだ高校二年生の頃──。
『お父さんの分からず屋!』
『待ちなさい! 紬花!』
進路のことで悩み始めていた紬花は、過保護な父親が進路に関しても厳しく口を出してきた為、さすがに息苦しさを感じて家を飛び出したことがあった。
紬花としては、心配してくれる父の想いを大事にしてきたつもりだったのだが、限界が訪れたのだ。
日に日に濃くなる夏の気配を感じる土曜日の昼前。
行き先も告げず、お気に入りの鞄を手に、ひとり繁華街をうろついていた。
目的は、今までしたくても父からの禁止令により、できなかったことを実行すること。
しかし、紬花が願うものは、ひとりでもできるものが少なかった。
スマホも持たせてもらえない為、友人を誘い出すことも出来ず、仕方なく父からまだ早いと禁止されていたことのひとつ【ス○バのコーヒーを飲む】を実行し、テラス席で人生初のコーヒーを味わっていた時だ。
『あっれー? 久しぶり! 元気してた?』
突然、知らない男性から声をかけられて紬花は目を丸くした。



