「兄さん」
「陽の恋人でないなら問題ないだろう?」
「あの、社長もどこかお加減が?」
兄弟揃って大変な状況なのらば、エトワールの危機なのではと心配した紬花だったが、博人は小さく笑って頭を振った。
「違うよ。君のような可愛い子が家にいてお世話してくれたら、すごく嬉しいって話さ」
「そ、そんな。ありがとう、ございます」
可愛いと褒められて、頬を赤く染めた紬花は思わず俯いてしまう。
(お世辞だとわかっていても、ストレートに言われると恥ずかしいな……)
本気とも冗談ともつかぬ博人の発言にドギマギする紬花の横顔を、陽は面白くなさそうに見ていたのだが、その様子に目ざとく気付いた博人がひっそりと口角を意地悪く上げた。
「橘さん、俺はこのマンションの最上階に住んでるんだけど、陽のことで何か困ったりしたら遠慮なくおいで」
「え、あの」
「兄さん、橘をからかうのはその辺にしてくれ。で、用件は?」
苛立った声で問いかけられ、博人は仕方なく話題の切り替えに乗る。
「怪我の様子を見に。あとは、ほら、これ」
右手にぶら下げていた紙袋を博人が差し出すと、紬花が代わりに受け取った。



