博人は弟に「やぁ、ただいま」と笑顔で挨拶するが、話が反れないよう、続けて「橘はただのアシスタントだ」と告げた。
「私生活もアシストする仲なんだろ?」
からかう口振りの博人に、陽はため息を吐く。
「勝手に責任感じておしかけてきただけだ」
「責任? ああ、右腕のか」
陽の怪我については、診断が出てすぐに陽から博人に報告された。
暫くデザイナーとして仕事に支障が出るかもしれないことを懸念していたのだが、アシスタントを雇ったのは幸いだったのかもしれないと、博人は申し訳なさそうに肩を小さくする紬花に視線を戻す。
「日常生活で大変なこともあるかと思って、お手伝いさせてもらってます」
無理をさせず、少しでも早く回復できれば、陽はまた、エトワールのデザイナーとしてバリバリ仕事がこなせるようになる。
一日でも早くその日が来るよう、紬花は精一杯尽くすことをふたりに伝えると、博人は瞳を優しく細めた。
「なんだ。これなら俺が顔を出さなくても大丈夫そうだな」
「橘に代わって家のことやってくれるなら歓迎するが」
「それは遠慮しようか。どうせなら、俺も君にお世話してもらいたいな」
小首を傾げて紬花に告げると、陽の眉根が険しく寄せられる。



