(確認が終わった? ということは出てくるんじゃ……!?)
このままでは鉢合わせてしまう。
走って逃げるか、フライパンで応戦するかと悩んでいるうちに扉が開き、紬花は覚悟を決め大きく息を吸うと、強く握りしめたフライパンを──。
「おい! 何をする!?」
振り下ろす寸前で、目の前の相手を見てピタリと止まった。
フライパンを掲げて今にも襲いかからんばかりの紬花の姿に、脱衣所から出た陽は驚愕し後ずさる。
「どろっ……しばさん?」
「どろしばって誰だ。俺は御子柴だ」
泥棒ではなく陽だったことに拍子抜けした紬花は、慌ててフライパンを下ろした。
「す、すみません。てっきり泥棒がドライヤーを使っているのかと」
「なんだその発想は。風呂に入ってたんだよ」
「えっ、泥棒がですか?」
「俺がだよ!」
会話の噛み合わなさに苛立ち突っ込む陽に、「ああ、なるほど!」納得してから、紬花はあること思い出し不機嫌そうに唇を尖らせた。
「私がお手伝いするって言ったじゃないですか」
「なかなか戻って来なかったからな」
だから紬花が悪いとでも言いたげに、陽は肩から羽織ったパーカーの前身ごろの位置を直してからリビングへ移動する。
その背中を紬花は追いながら「たった三十分ですよ?」と抗議した。
「俺の予定では風呂に入る時間だったんだ。というか、風呂までやる必要ない。子供じゃないんだ、ひとりでできる」
本音を言えば、紬花がいないうちにと急いで入浴を済ませたのだが、自分でできることをアピールし、カウンター下の引き出しからグラスを手に取ると炭酸水を入れた。
「もう……じゃあ、私はおつまみの用意をしますね」
「ああ、頼む。俺は少し仕事をしてくる」
言い残し、グラス片手に陽がアトリエへと向かうのを見送ると、紬花はさっそく調理に取り掛かった。



