「橘」
「はい」
「アトリエも見るか?」
世話についてすぐに諦めさせるのは難しそうだ。
ならば、紬花の参考になるかもしれないと、陽は時間を有効に使うべくリビングの隣にあるアトリエへと誘った。
「アトリエに? いいんですか?」
「ハウスキーパーにも掃除は頼んでいる。何か壊すつもりで入るなら問題だが、そうでないならかまわない」
素直に何か得るものがあるかもしれないから見てもいいと言えず、嫌味な言い方をしてしまったのだが、やはり紬花には気に留めた様子はない。
「気をつけますね! あ、コーヒーはどうしますか?」
「そのままカウンターに置いてかまわない。アトリエはこっちの部屋だ」
促され、紬花は緩やかに湯気の上るコーヒーをカウンターにそっと置くと、急いで陽の後を追った。
「ここだ」と、陽の手がダークブラウンの扉を開き、アトリエルームに入った紬花は思わず声を零す。
「わ……教会みたい」
「まさに教会を意識して作った部屋だ。この方が実際に式に立った時のイメージが浮かびやすい」



