始めこそ、いらぬ世話だと追い返そうとしていたが、今となっては紬花が折れずに居候することになって良かったと陽は思っていた。
そうでなければ、今、こうして寄り添ってなどいなかっただろうから。
そして、それは紬花も同じ気持ちだった。
怪我をしたのが陽ではなかったら。
ひとりで階段から落下し、自分が怪我をしただけなら、陽が初恋の相手だということを知らないまま今も上司と部下というだけの関係でいたのかもしれないのだ。
運命か、奇跡か。
どちらかはわからないが、わかるのは紬花の父が真実を知った時の反応だ。
「きっと、父にバレたらお付き合いを反対されるかと」
社内でごく普通に惹かれ合い、恋に落ちて交際に至っただけならいい。
しかし、お付き合いしている相手が、実は世話をしていた人物でした……では、騙していたあげくにと激怒されるのは間違いない。
紬花の父と面識はないが、その展開は陽にも想像に容易かった。
「本当は引き止めたいところだが、先のことを考えたら一度帰るのがいいか…」
「はい……。でも、本当はもっと一緒にいたいです」
このままずっと一緒にいられたら幸せなのに。
素直な気持ちを口にした紬花がはにかむと、陽はたまらず紬花の背に腕を回し引き寄せ唇を奪う。
「俺も同じ気持ちだ。ひと時も離れたくない」



