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「お風呂、いただきました」
「ああ、お前も飲むか?」
陽の上機嫌な声が紬花の耳を打つ。
ワイングラスを揺らし、隣に座るようにと陽は手招きする代わりにソファーを軽く叩いた。
紬花は「飲めないので」と断りながら、素直に陽の隣に腰を沈める。
「社長からもらったお土産ですか?」
「正解。こんなに美味いのに飲めないなんてもったいないな」
そう言って、陽はまた豊潤な味わいの白ワインを口にした。
いつもより表情が柔らかい。
きっと、博人との間に生じていた軋轢が落ち着いたからなのだろう。
それは、ワインをより一層美味く感じさせているのかもしれないと、紬花は頬を緩ませた。
陽がグラスをテーブルに置いたタイミングで、紬花は口を開く。
「あの、陽さん。私そろそろ家に戻ろうかと思って」
「そうか。父親は厳しいんだったな。よく世話のことを許してくれたじゃないか」
「いえ、その……女性の家ということにしてます」
歯切れ悪く言った紬花の苦笑を見て、陽はなんともいえない気持ちになる。
「そんな危険を冒してまで世話しにきてたのか」



