「悪いと思うなら、これからも御子柴の家とエトワールを盛り立ててくれ」
博人は人より努力家で情熱に溢れている人物だ。
行動力だけでなく計算高い面もあり、経営者として申し分ない。
エトワールがさらに飛躍するには欠かすことのできない人物であると、共に働くようになってから陽は常々感じていた。
「兄さんがいるから、俺はデザイナーとしてもやっていけてるんだ」
尊敬する祖母が起ち上げたエトワールのデザイナーになりたい。
迷っていた陽にその道を進むと決心させたのは別の人物だが、兄が上に立ってくれなければ、不器用な自分では経営とデザイナー業を両立できずにいたかもしれないのだ。
海外に支店を増やすなど、そんなことを考え実行する余裕もなかっただろう。
「これからもよろしく、兄さん」
伝えると、博人は憑き物が落ちたかの如く肩の力を抜き、「ああ」と眦を下げる。
そんなふたりの様子を静かに見守っていた紬花は、陽と博人は血が繋がっていないことを思い出していた。
(血の繋がりなんて関係ないよね)
何やらふたりの間には色々と大変なことがあったのだろう。
けれど、どうやらそれらを乗り越えたらしきふたりの雰囲気は、本当の兄弟のように打ち解けて見えた。



