「送るってば。」
寺島くんが私を引っ張る。
『大丈夫だよ。駅なんか歩いて10分だし。』
申し訳なくて断っているのだが、寺島くんは送るの一点張り。
結局は
『わかった。じゃあ、駅までお願いします。』
私が折れたのだけれど。
「なんか、兄ちゃんと千鶴さんって恋人みたい」
私たちの会話を聞いていた翔くんが爆弾発言
『そ、そんなことないって!』
「何照れてんの?ほら、行くよ」
寺島くんは少しにやけながら私を引っ張る。
『あ、じゃあね!また話そうね翔くん!』
「うん!千鶴さん、また来てね!あ、俺の家じゃないけど。」
『うん!』
翔くんと別れの挨拶を颯爽と済まし、駅までの道を寺島くんと歩く。
だが、
『あ、あの…』
「ん?」
なぜ、手を繋いでるんだろう
『な、なぜ手を…』
「あー、これは成り行き。」
そう言って、寺島くんはニコッと笑う。
『そ、そうかぁ…』
なんでだろう、ドキドキする。
か、勘違いするなよ!成り行きなんだぞ自分!
…。
そういえばと、気になってたことを聞いてみる
『あのさ!なんでさっき、私が職場では隠してるって意地悪言ったの?』
率直に聞いてしまうところが私の悪いところでもあり、長所でもある。
つまり単細胞なのかもしれない。
「…。俺、ちょっと怒ってる」
『え!?』
な、なんでだろ…?
「だって、俺だって名前呼びたいし」
そういう寺島くんの顔は見えなかったけど、きっと照れてるんだろうと悟った。
『名前?』
「翔にはち、千鶴さんって呼ばせてたでしょ」
…。
対抗意識?
かわいいじゃないか!
『べ、べつに寺島くんも呼んでいいよ?』
「じゃあ、高梨さんも名前で呼んでよ」
『え、』
こやつ、なんなんだ。
ピンポイントでキュンキュンさせんな!
少女漫画かよ!
『わかっ、た』
そういうと、寺島くんは私の方を向いて歩くのをやめた。
これは…私から呼ばなければいけないのか…?
『……た、まきくん』
やばい…照れる!!
「千鶴ちゃん。」
寺島く、環くんはそう言って照れ笑いした。
なんか、本当に付き合いたてのカップルみたいな光景だ…。
でも、勘違いは禁物。
環くんはきっと、翔くんへの対抗意識で怒ってたんだもん!
嫉妬とか少しでも考えてた自分を自分で戒める。
それから、環くんは駅まで無事に送ってくれた。
駅に着くまでお互いになんか恥ずかしくて、目が見れなかったけど。

