「はぁー」
私の探していた寺島くんであろう後ろ姿の人が大きなため息を吐いてドアの前に佇んでいた。
『お疲れ様。』
私が背後から声をかけると、びっくりする訳でもなく
「あ、お疲れ様。」
と返してくれる。
『大変そうだね。今から会議?』
「いや、今日はもうこれで終わり。明日からは当分は資料作成らしいよ。」
『そうかー。』
てことは、明日からは事務所が大騒ぎかな。
「で?どうしたの?」
私の方を向き直してきょとんと首を傾ける。
こんな動作を見ると、本当に女嫌いなのか問いたくなる。
『あ、そうだ!この資料を今日中に仕上げてって畑中係長が。』
ほいっと資料を手渡しすると、あーっと声を上げて寺島くんは受け取る。
どうやら忘れていたようだった。
「忘れてた、ありがとう。社食奢るよ。」
『いや、いいよ。私畑中係長に頼まれただけだし。それに、ほらあのぉ…』
私が喉元まで言葉が出かけて躊躇っていると
「あー、畑中係長なんか変に勘ぐってるよな」
『そう!それなの!ほんと辛くて…』
「あの人、結構色恋沙汰好きそうだもんな。まぁ、でも俺らの中でなんもないんだからここまで来てもらったし、奢るくらいさせてよ。」
『んー、そうだね!じゃあ奢られる!』
そう冗談ぽく笑いながら言う
「おう、任せろ。」
そう言って私たちは昼食の約束をして、事務所にもどることにした。

