☆さよならの後

あの日、私は人生で初めて、さよならを告げた。

あれからどれくらいの月日が経っただろう。



「はい、はい。よろしくお願い致します。」

プチっ


「ふぅ…無事終わってよかった」

上を見上げると広がる青空

いい天気…


社会人となった私は、なんとか就活を乗り越え、旅行会社に勤めている

仕事はキツイ時もあるけど、嫌いではない
休みも比較的多いし、給料もちゃんとしている
なにより、やりがいを感じれる仕事

今日は元々休みだったけど、ツアーのトラブルで呼ばれて、さっきやっと解決したところ


「どーしよ…」

直帰するのも気が引けるし、ちょっとだけ散歩しようかな


見慣れた街並み

よくいくお店

腕組むカップルを横目に、いつもの景色を眺める


りく…元気にしてるかな?


あの冬、雪の中さよならを告げたのはりくだった
泣く私を抱きしめ、「ごめん…」と辛そうに呟いた言葉

あの時どうして、抱き締めたの?
どうして声が震えてたの?
暗闇でも見えた涙の意味は…?

その謎は解かれないまま、季節が過ぎて、いつの間にか早1年


りくからの別れは辛かったけれど、就活で落ち込んでいる場合でもなく
それ以上の痛みを知っていた私はすぐに立ち直ることができた



それ以上の痛み…

りくの前の人からの言葉の方が…ずっとずっと、痛かった…



それ以来、彼氏はいない

私が1年以上も彼氏いないなんて、友達からは驚かれるけど

新入社員になって、勉強することが多くて彼氏どころじゃないし、しばらく恋愛からは距離を置こうと思った


でも、辛い時心の寄りどころがないのは苦しいもので

やっぱり、一人は寂しいよ…


ドンッ

「わ、すみませ…」

やば、ぼーっとしてた

ハッと顔を見上げた瞬間、私の身体は凍りつき、時間が一瞬止まった