一緒になれないのに、兄だけ一緒になれると疑問を抱き、取っ組み合いの殴り合いになった。ぐたっとなった三田君は、切ない気持ちではち切れそうだった。彼女と別れて、11年近くなり、一昨年のクリスマスの公開放送、プレゼント企画、当たって出て来た一組の母と娘。冷静な私は我を失いかけた。」

「彼女だった…。彼女は変わらなくきれいだった。彼女は私に知れまいとカオを隠していた。横で喜ぶ子供に、結婚したんだと少し安堵を浮かべ、解放されると思った。放送が終わり、子供がトイレに行って、一人になった彼女に話しかけた。彼女は、え…っと、”まいちゃん”とでもしておこう。まい、と呼んで、話し掛ける。彼女は、少し動揺した。…元カレだから当然だと思う。彼女はよそよそしく、さんだくん、久しぶりと答えた。結婚したんだ。彼女は頷く。その時は気付かなかった。彼女の左手の薬指に指輪がなかったなんて。」

「年が明けてすこしした頃、学校帰りの彼女の娘を見つけた。ランドセルを背負っていた。話してみた、彼女はどういう人と結婚したのか。彼女の娘は、三田君を見て、喜んだ。毎日聞いていて虜になってたみたいだ。嬉しがっていた。そして娘に恐る恐る聞いてみた、パパはいないよ。見た事ないと。彼女のついた嘘。何も知らない三田君は、聞いた事を後悔した。それでもにっこり笑う彼女の娘にときめきを覚えた。」

「それから彼女の隠している娘の出生の事実を知るまではそこまでかからなかった。また、帰りに出会う。声をかける。素直なコだから、お母さんには内緒だよと言ってしばしば会っていた。三田君にはよくなついていた。子供なので大人より頭が重い。娘は転んだ。散らかるランドセルの中身。その中に一つの巾着袋があった。中から見えたもの。…これは!?子供は、パパのお守りと言った。三田君はクローバーの指輪に触れてみた。」

「頭が真っ白になった。涙がぽろぽろ出てきた。このコはオレの娘だ…。どうして泣いてるの?尋ねる娘を、三田君はそっと抱いた。そして、別れた。クローバーの指輪。それは三田君が彼女に贈ったもの。大事に磨かれていて、彼女が大事にしていたことがわかる。別れた男のプレゼントを子供に渡す。それは、その人が父親だと証明するもの。家に帰った三田君は、悩んでいた。手には幸せだった頃の写真。オレの娘…。彼女に全てを聞こう、…娘を抱きたい。」