抱きしめる腕を解いて先輩が真剣な顔でこっちを見てる




「えっと…」




普段と様子が違って困惑していると




「なんてな」




そう言ってニコッと笑った




「からかわないでください…!」




「やっぱ杏ちゃん見てると意地悪したくなる」




「もう…」




先輩を睨むと




「だからその顔やめてまじで」




そう言いながら口元を手で抑えて横を向いてしまった




「え?」




「他の奴にしたら怒る」




そう言って頬っぺを軽く摘まれる




「痛…」




「はは、俺決勝あるからそろそろ戻るね?」




試合の間なのに来てくれたんだ…




「頑張ってください…わざわざありがとうございました…」




そう言うと先輩は早足で出ていった。




一人きりの保健室で気づくとそのまま眠っていて




起きると見慣れた寝室に居た




いつ間に家に…




「私どうやってここまで…」




「連れて帰った」




リビングに行くと先生がそう言いながらご飯を並べてくれる




「先生…」




「なんだ」




「何から何までありがとうございます…」




「ったく」




時計を見るともう21時過ぎで、先生はコーヒー片手に眼鏡をかけて読書中…




眼鏡姿初めて見た




あまりに似合ってて、ついじっと見つめていると




「今度はなんだ」




ハッと我に返る




「な…なんでもないです」




ご飯を食べ終わってお風呂から戻ると




先生がソファーに座ったまま眠っているからそっと毛布を掛けた




相変わらず綺麗な顔…




保健室でされたみたいに軽く頭に触れてみる




男の人なのにサラサラな髪…




「麻美…」




え…




消えそうなくらい小さな声だけど確かにそう聞こえてパッと手を離す




麻美…




彼女…かな




何故か悲しくなって、急いで寝室のベットに潜り込む




嫌な感情がどこからか溢れ出してきて止まらない